Vol.5 阿波しじら織

Vol.5 阿波しじら織

ルークを背中に、徳島へ

徳島には、何度行っただろう。

わたしは山を歩くのが好き。スコットランドで育ったころから、週末になると家族でハイキングに出かけた。ハイキングシューズを履いて、いくつもの丘を越えた。

日本に暮らすようになっても、その習慣は続いている。四国に住んでからは、隣の徳島へよく車を走らせた。かずら橋、土柱、剣山、吉野川。山と川と、雄大な自然がある。

日本では、ルークとレイアも連れていくようになった。

ルークはモンベルのキャリーパックに入れて、背中に担いだ。メッシュの窓から顔を出して、景色を見ているのか眠っているのか、ときどき確認しながら歩いた。

猫と歩くのは不便でもあるけれど、その不便さごと愛おしかった。

 

うだつの町で

帰り道に、脇町のうだつの町並みに立ち寄るのが好きだった。

江戸時代に藍の集散地として栄えた町で、豪商たちが競い合うように高いうだつを上げた。うだつの上がらない、という言葉はここから来ていると知った。

白壁に格子が続く通りをゆっくり歩きながら、藍という植物が一つの町をここまで豊かにしたことに、しみじみとした驚きを覚えた。

そこで、藍染を知ったのだけど、徳島の藍は「阿波藍」と呼ばれ、かつては日本の藍の大半をここが担っていたという。深く沈んだ青の美しさを、肌で感じた。

そして、わたしの惚れた阿波しじら織も、その徳島の布。そこで出会った。

 

一触れぼれ

はじめて阿波しじら織を手に取ったとき、少し緊張したのを覚えている。

遠くから見ると、伝統色の藍の落ち着いた縦縞が、なんだか重厚で近づきがたい印象だった。歴史を聞いたからか、やはり、その染められた色に恐縮していたのかもしれない。

ところが、触れた瞬間、その印象は消えた。

軽い。羽のように軽い。指先でなぞると、細かな凹凸が伝わってくる。軽やか。

シボと呼ばれる織りの工夫で、布は空気を通し、肌に涼しく馴染む。清々しさ、という言葉しか思いつかなかった。一目ぼれならぬ「一触れぼれ」をした。

 

阿波しじら織

徳島を歩きはじめて、最初のころに出会った布。

うだつの町の白壁と、藍の深い青。色も織も好き。

散歩の途中で出会う歴史や伝統文化、気軽に軽やかに、暮らしに馴染んでくれてうれしい。

ふれて好きになる布もある。できたら一度、手にとって欲しいと思う。

ルークを背負って歩いたあの帰り道を思い出しながら、次はいつ行こうかと思いめぐらしている。