Vol.2 絹
曾祖母のスカーフ
曾祖母には、一枚のスカーフがあった。
フランス製の絹のスカーフで、曾祖母が若いころから愛用していたという。薄い布地に細かな花の模様が刷り込まれていて、陽にかざすと透けて見えた。
曾祖母が70歳を過ぎてから、わたしが生まれた。それでも飛行機に乗って海外まで何度も会いに来てくれた。わたしも日本に帰国すれば必ず会いに行った。いつも背筋の伸びた、とてもお元気な人だった。
幼いころ、パリへ一緒に行った。セーヌ川のほとり、カフェの椅子、美術館の出口。そのときの写真に、幼いわたしと曾祖母が並んでいるのだけれども、どの写真にも、首のあたりに同じスカーフが写っていた。
なつかしい布
曾祖母が亡くなって、そのスカーフがわたしのところに来た。
初めて纏ったとき、驚いた。わたしのものではない、知らない布のはずなのに、まるで前から持っていたもののように馴染んだ。写真のせいかもしれない、かすかな既視感もあった。もしかしたら、これが絹というものかもしれないとも思った。知っているのに、知らない。はじめてなのに、なつかしい。
絹は蚕の繭から引き出した糸でできている。蚕が自分の体を守るために紡いだものが、やがて人の肌を包む布になる。その変容の深さが、絹の手触りに宿っているような気がしている。
猫たちの絹
ルークとレイアに、日本の絹で作った蝶ネクタイを着けてみた。
ただただ、いいと思った。しっくりきた。絹が、ごく普通の午後の光の中で、ルークの首のあたりで静かに光った。
現代の暮らしで絹にふれる機会は少ない。けれども、こうしてペットのアイテムを通して絹を知ることができたなら、それはなかなか粋なことだと思う。
特別なものが、日常の中にすんなりと収まる感じ。曾祖母のスカーフがわたしに教えてくれたのも、まさにそれだった。
ぜひ一度、手に取ってみてほしい。