Vol.9 播州織
セーラーリボンと、神戸の冬
神戸は好きな街のひとつ。
海外に住んでいた子どものころ、冬に一時帰国すると、必ず神戸へ行った。
曾祖母、祖父、祖母、わたしの家族、みんなで連れ立って、港の見える街を歩いた。
冬の神戸は空気が澄んでいて、海からの風が頬に冷たかった。異人館の坂道を上ったり、南京町の路地を歩いたり。日本のどこよりも、すこし外国めいた空気を持っていたからか、わたしにとって、日本という母国のふところとような場所なのかもしれない。
今は祖父も曾祖母もいない。でも祖母と今も神戸へ行く。二人で歩くと、あのころの冬の空気がふとよみがえる。
日本らしさ
わたしは海外で教育を受けたのだけれども、インターナショナルスクールの制服は、セーラー服ではなかった。
それで、日本の中高生がセーラー服を着て、首もとにリボンを着けているのを見て、なんとも、かわいい制服だなぁと思っていた。それは、わたしにとって、日本らしさのひとつだった。
神戸の街のどこかで、播州織の布を見たことがあった。シャツ地として知られる、細かく丁寧に織られた綿織物の布。
そのチェック柄は、かわいい日本のセーラー服を想わす、現代の日本らしさだった。海外にもチェック柄はあるけど、わたしの頭の中では、日本のチェック柄という記憶になった。
兵庫県西脇市を中心に作られる播州織。神戸の港から世界へ輸出されてきた布だと、あとで知った。
ペットのセーラーリボン
ルークとレイアに、セーラーリボンを作ろうと思ったとき、あの布が浮かんだ。
播州織は、しなやかで、発色がいい。かわいいチェック柄なのだけれども、リボンに仕立てると、意外ときちんとした表情になる。
今の日本らしさを、ルークとレイアが身につけている、そう思うと、少し嬉しかった。わたしは着たことのない制服なのに、懐かしさも感じた。
神戸の冬、家族みんなで歩いた港の街。播州織はその記憶を、ひとつのリボンの中に縫い合わせてくれたと思う。