布の話
猫のそばに、いつも布があった。
高祖母の和裁部屋から、
スコットランドの丘まで。
布は時間を越えて、ここに来た。
Vol.1 冒険バンダナ
スコットランドの格子と、日本の毛織物
スコットランドの空は、夏でも低い。
雲が丘の稜線すれすれに流れて、その下を羊たちがのんびりと歩く。小学生のわたしは、週末になるたびに家族で古城へ、廃墟へ、湖畔へと出かけた。ハイキングシューズを履いて泥だらけになりながら歩いた、あの大らかな自然のことを、いまも鮮明に思い出す。
タータンという布を好きになったのは、そのころだ。
スコットランドでは、家ごと、氏族ごとに固有のタータン柄がある。格子の色と幅の組み合わせが、血筋と土地を示す。日本でいえば家紋に近いのかもしれないが、それが布として体に巻かれているところがちがう。着ることで、自分がどこの誰かを名乗る。
日英交流の記念に
あるとき、日英交流150周年を記念して「The Four Seasons」という日本のデザインをモチーフにしたタータンが作られた。わたしにもそのタータンでスカートとお人形の服を誂えてもらった。日本の柄が、スコットランドの布になる。そのことが子どものわたしには、ふしぎで、嬉しかった。
タータンの向こうに、日本があった。
日本の毛織物で、冒険に出る
エルエルポウズをはじめようとしたとき、最初に思い浮かんだのが、あのタータンの記憶だった。スコットランドの自然に馴染む格子柄の布。それを日本で作れないだろうか。日本の風景に、日本の暮らしに、すんなりと溶け込む格子のバンダナ。
日本にも、美しい毛織物がある。ていねいに織られた、重みのある、温かい布。
ルークとレイアをハイキングに連れていくようになって、いつしかそのバンダナのことを「冒険バンダナ」と呼ぶようになった。大げさに聞こえるかもしれないが、わたしは本当にそう思っている。生きることそのものが、ひとつの冒険だから。ペットも、人も、日々どこかへ向かって歩いている。
少し外国っぽいのに、しっかり和である。そんなバンダナが、あなたの冒険のお供になれたら嬉しい。