Vol.8 金襴

布の話

猫のそばに、いつも布があった。
高祖母の和裁部屋から、
スコットランドの丘まで。
布は時間を越えて、ここに来た。

Vol.8 金襴

五歳のキラキラ

五歳の秋、数ヶ月だけ日本に暮らした。

両親と一緒に一時帰国したそのとき、七五三の支度をしてもらった。赤い絞りの着物を誂えてもらって、子ども用の飾り帯を結んでもらった。着付けをしてもらいながら、胸もとに小さなお財布のようなものを下げてもらったのを覚えている。

それが金襴だった。

金の糸が幾重にも織り込まれた、重みのある布。五歳のわたしの目には、それがただただ眩しかった。キラキラしていた。こんなにキラキラしたものが、布でできているということが、不思議だった。

金の糸の記憶

金襴は、金や銀の糸を織り込んだ絹織物だ。西陣織の金襴は、その代表格として長く受け継がれてきた。寺院の仏具や、茶道の道具を包む裂地として、日本の美の中心にあり続けた布でもある。

その布を、ペットの和リボンにしようと思ったのは、あの五歳の記憶があったからかもしれない。論理的なつながりではない。でも、手に取ったとき、「これだ」と思った。

金の糸が重なり合うと、布は厚みを持つ。リボンにしたとき、その厚みが「豪華さ」になる。存在感がある。首輪につけると、まるで小さな帯のようだ、と思う。

パステルの金襴

猫柄やうさぎ柄の金襴がある。かわいらしい柄に、金の糸。ルークとレイアがつけた写真を撮ると、その贅沢さと可愛さが同時に伝わってくる。

人気なのは、パステルカラーの金襴だ。やわらかいピンク、薄いラベンダー、淡いミント。そこに金糸が入ると、上品で、でも重くない。わたし自身がそういう色に惹かれる。若いからかもしれないし、ルークとレイアに似合う色を探しているうちに辿り着いた色かもしれない。

五歳の秋に目を奪われたキラキラが、四半世紀近くを経て、こういう形になっている。布は、記憶ごと続いていく。